国をつくるという仕事
西水美恵子(著), 田坂広志(解説)
価格 | 1,980円(税込) |
頁数 | 320頁 |
判型・製本 | 四六判 上製 |
発売日 | 2009/04/06 |
ISBN | 9784862760548 | 発行 | 英治出版 |
内容紹介
貧困のない世界を夢見て・・・23年間の闘いから見えてきたもの
◆はじめて訪れたエジプトの貧民街。少女ナディアが自分の腕のなかで息をひきとったとき、自分の人生が決定的に変わった――。基本的な医療があれば救える病気で命を落とす子どもたち。想像を絶する貧困の一方で、富があふれる都会があり、貧しい人々の苦しみを気にもかけない政治がある・・・。衝撃と怒りで一睡もできなかった帰路、著者は貧困と闘う仕事に取り組むことを決意する。
世界銀行に入った著者は、南アジア各国、アフガニスタン、パキスタン、バングラデシュなど数多くの途上国を担当。貧困地域に自らホームステイして現場の問題を探り出し、安易に援助を行うのではなく、地元のリーダーを支援することで自律的な貧困脱却を促す。民衆を顧みない権力者には、「それでもあなたは政治家か」と怒り、一歩も引かずに闘い抜く。現場を軽視した施策は改め、ほんとうに必要な支援を追求する。
貧困や悪政と闘いつづけた 23年間。それは、この世界を変えたいと願う、あらゆる職場のリーダーたちと共に歩んだ道のりだった。農民や村長、貧民街の女性たちや売春婦、学生、社会起業家、銀行家、ジャーナリスト、政治家、中央銀行総裁、将軍や国王に至るまで――。本書は、「国づくり」の現場で出会った本物のリーダーたちの姿を情感込めて綴った回想記であり、今なお貧困や悪政の渦巻く世界を変えていくための、未来に向けたメッセージである。
◆著者・西水美恵子氏は、女性としても日本人としても初めて世界銀行地域担当副総裁となった人物です。貧困との闘いにおいて、現地の人々自身のリーダーシップを支援することで成果をあげた他、自ら貧村にホームステイを行うなど、つねに「現場」に根ざした「国づくり」を推進しました。また、各国の為政者と信頼関係を築き、時には喧嘩も挑むなど積極的に政治改革を支援。ブータン国王・雷龍王4世やパキスタンのムシャラフ元大統領はじめ、多くのリーダーのエピソードが本書に綴られています。貧困との闘いの一方で、世銀内部の組織改革にも取り組み、その手法はピーター・センゲ教授はじめ経営学界でも高く評価されています。
◆著者の意向により本書の印税はすべて「雷龍の国」ブータンのタラヤナ財団に寄付され、貧しい家庭の児童の教育費等に役立てられます。
目次
まるで一卵性双生児[インド、パキスタン]
チャンドリカの癖[スリランカ]
ああこの国はどうなる……[ネパール]
カシミールの水[インド、パキスタン]
偶然[トルコ、バングラデシュ、スリランカ]
人づくりの奇跡[ブータン、パキスタン]
男尊女卑?[インド、スリランカ、バングラデシュ]
雷龍の国に学ぶ[ブータン]
悲しい……[パキスタン、スリランカ]
売春婦「ナディア」の教え[バングラデシュ、インド]
改革という名の戦争[パキスタン]
神様の美しい失敗[モルディブ]
夢は大きく[ハンガリー]
遠すぎる和平[スリランカ]
神の試練[パキスタン]
ヒマラヤの橋[インド]
退屈で静かなイノベーション[バングラデシュ]
マレが燃えている[モルディブ、ブータン]
白い革命の夢[インド]
返歌[ネパール]
ヒ素中毒に怒る[バングラデシュ]
歩くタラヤナ[ブータン]
「羅生門」[ブータン]
殺人魔[インド]
サーバント・リーダー[パキスタン]
竜のからくり[バングラデシュ]
構造的な障害[インド]
戦いを略す[ネパール]
川も干上がる[アフガニスタン]
女神の宿題[インド]
森の民に幸あれ[インド]
飢饉の呪い・ダムの呪い[インド]
女の特権大いばり[南アジア諸国]
殺生禁断の戦略[インド、ブータン]
水際立つ……[ブータン]
真のリーダーの抱く夢――解説に代えて(田坂広志)
著者
西水美恵子(にしみず・みえこ)
大阪府豊中市に生まれ、北海道美唄市で育つ。中学3年から上京。東京都立西高校在学中、ロータリークラブ交換留学生として渡米し、そのままガルチャー大学に進学。1970年に卒業後、トーマス・J・ワトソン財団フェローとして帰国。千代田化工建設に席を借りて環境汚染問題の研究に従事した後、再度渡米。1975年、ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程(経済学)修了。同年、プリンストン大学経済学部兼ウッドロー・ウィルソン・スクールの助教授に就任。1980年、世界銀行に入行。開発政策局・経済開発研究所、産業・エネルギー局、欧州・中東・北アフリカ地域 アフガニスタン・パキスタン・トルコ局、国際復興開発銀行リスク管理・金融政策局局長、南アジア地域アフガニスタン・バングラデシュ・パキスタン・スリランカ局局長などを経て、1997年に南アジア地域副総裁に就任。2003年退職。現在、米国ワシントンと英国領バージン諸島に在留。世界を舞台に執筆や講演、さまざまなアドバイザー活動を続ける。2007年よりシンクタンク・ソフィアバンクのパートナー。