老人は言った。
この密林の中に、「決して折れない木」が、ただ1本だけある。
しかしその木は、見た目は他の木と何一つ変わらない。
見つける方法はただ一つ。
一つひとつの木を、根気強く、
激しく揺すり、ナタを振り下ろし、ノコギリを引くのだ。
折れる木は、折れていくだろう。
「決して折れない木」も、揺すれば揺れ、ナタを振り下ろせば傷つき、ノコギリを引けば痛むだろう。
しかし、決して折れることはない。
旅人はさっそく、目の前の木を揺すった。
その木は、あっけなく折れてしまった。
旅人は次の木を揺すった。
しかし、折れることはなかった。
そこでナタを振り下ろしてみると、
一撃のうちに折れてしまった。
旅人は3本目の木を揺する。
折れる気配はない。
ナタを振り下ろしても、耐えている。
祈るような気持ちでノコギリを引くと、
願いは叶わず、その木も折れてしまった。
目の前の無数の木を有する密林を前に、旅人は座り込んだ。
再び老人は言った。
運の良い者は「決して折れない木」にすぐに出会うことができるだろう。
だが皆がそういうわけでもあるまい。
心の持ち方を教えよう。
出会えば「決して折れない木」の発見だ。
しかし、折れた木も、また発見なのだ。
「これは『決して折れない木』ではなかったのだ」という発見なのだ。
そう、すべては発見だ。
無駄なことは何一つない。
休みながらでもいい。
だが決して、動くことを諦めないことだ。
たくさんの木と出会いなさい。
たくさんの物事とぶつかりなさい。
たくさん空しい思いもしなさい。
ほんの数本のうちに出会えた者は、運が良かっただけだ。
全てやり切って、全てが折れてしまったと思えた時、顔を上げてみなさい。
荒れた大地に、ただ1本、そびえ立つ木に出会うだろう。
遅かれ早かれ、どちらにしても出会えるのだ。
動くことを諦めなければな。
「決して折れない木」は、見た目は他の木と変わらない。
だが、出会ったその時に、力強く輝きを放ち始めるのだ。