人間は、生まれながらにして意義を追い求めるものである。呼吸をして体温を一定に保つのをやめられないのと同じくらい、意義を追い求めずにはいられないのだ。
―― 第10章 P197

[訳者解説]

ガードナーの思想には、二つの大きな側面があります。

一つは、人間性を客観的かつ現実的に捉える、心理学者としての側面。宗教的な道徳観や極端な理想主義に流されることなく、「人間とは、生来こういうものだ」という割り切った考え方をします。

もう一つは、個人としての自己実現を社会の繁栄に結び付けようとする、社会変革のリーダーとしての側面。個人の自由を尊重しつつも、独善的な個人主義に陥ることを戒め、社会的に意義のある活動に目を向けさせようとします。

人間の根源的な欲求に逆らうことなく、自己実現を促し、よりよい社会づくりに貢献させる――『自己革新』の魅力は、この二つの側面を行き来しながら、非常に説得力のあるメッセージを展開しているところにあるのではないかと思います。

そして、その「人間の根源的な欲求」とは、「意義(meaning)」を追求することだとガードナーは言っています。この本の第10章の192ページには、次のような印象深い文章があります。

幸福という概念は、おとぎ話に出てくるような幸福とは根本的に異なったものになる。おとぎ話でいう幸福とは、欲求が満たされるということだ。より真実に近い幸福とは、有意義な目標――すなわち個人をより大きな文脈における目的と結びつける目標――に向かって進むことに関わっている。おとぎ話の幸福とは、なんの張合いもなく遊び呆けて暮らすことである。真の幸福とは、何かを追い求め、目的意識を持って努力することである。おとぎ話の幸福とは、楽しく無駄な時間を過ごすことである。真の幸福とは、自己の能力と才能を最大限に発揮することである。どちらの幸福も、愛を含んではいるが、おとぎ話の幸福が愛されることに重点を置いているのに対し、真の幸福は愛を与える能力に重点を置いている。

真の幸福は愛を与える能力に重点を置いている――これこそが、ガードナーの思想の二つの側面、すなわち人間の根源的な欲求の追求と、よりよい社会づくりを統合し、昇華させているメッセージなのです。そしてこれは、洋の東西や宗教の違いを問わず、誰もが共感できる言葉なのではないかと思います。

自己革新[新訳]
――成長しつづけるための考え方

Self-Renewal: The Individual and the Innovative Society

20世紀アメリカを代表する知識人として知られる
ジョン・ガードナーの代表作。

【著者】ジョン・W・ガードナー
【訳者】矢野陽一朗
【価格】1,500円+税




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