社会や組織を再活性化することを論じるとき、私たちは新しいアイデアを見つけることだけに重点を置きすぎる。しかし、新しいアイデアがなくて困ることは、ふつうはあまりない。問題は、それを聞き入れてもらうことなのだ。これは気難しい頑固さや、現状に対する手に負えない自己満足を打ち破ることを意味する。衰えつつある社会や組織は、新しいアイデアに対する防壁を築く。ウィリアム・ブレイクの鮮やかな表現を借りれば、「心を縛るかせを作るのだ。
―― 第5章 P104

[訳者解説]

少し古い話になりますが、日産自動車が1999年に経営危機に陥ったとき、資本提携先のルノーから新たなCEOとしてカルロス・ゴーンが送り込まれました。当時の日産は2兆円あまりの有利子負債を抱え、倒産寸前。ゴーンのチームは半年後に「日産リバイバルプラン」をまとめ、生産拠点の閉鎖、資産の売却、人員の削減など思い切った改革を進めました。その結果、日産の業績はV字回復を遂げ、2003年には有利子負債もゼロになったのです。

実は、これらの改革案はゴーン自らが考えたものではありませんでした。彼は部門の壁を超えた現場の社員から構成されるクロス・ファクショナル・チーム(CFT)を作り、コスト削減、生産リードタイムの短縮化、品質向上など、特定の課題を解決するために協力して改革案を出すよう促したのです。

ゴーンはこれらの改革案を取捨選択し、強力なリーダーシップで実行に移したのでした。このエピソードから、組織を活性化させることによって、社員を「心を縛る枷」から解放できることがわかります。そして、優れたリーダーは社員の声に耳を傾け、彼らが持っている新しいアイデアを聞き入れ、その実現を手助けすることによって、成果を生み出すのです。



自己革新[新訳]
――成長しつづけるための考え方

Self-Renewal: The Individual and the Innovative Society

20世紀アメリカを代表する知識人として知られる
ジョン・ガードナーの代表作。

【著者】ジョン・W・ガードナー
【訳者】矢野陽一朗
【価格】1,500円+税




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