成長や衰退を考えるとき、私たちは、単体の動物や植物の生涯に対するイメージを思い浮かべる。苗木、満開の花、そして死。「ひとたびは咲きし花、永遠とわに死ぬべし」。しかし、永続的に革新する社会の適切なイメージは、庭園全体やバランスのとれた水槽などの閉じた生態系である。あるものは生まれつつあり、あるものは繁栄し、さらに他のものは死につつある。しかしシステムは生きているのだ。
―― 第1章 p39

[訳者解説]

個人でも、会社や政府のような組織でも、地域社会や国全体でも、成長をつづけていくと、やがて成熟し、活力を失って衰退していきます。ガードナーが『自己革新』の中で説いているのは、どうすればこれを避けることができるのか、つまり、どうすれば成長しつづけることができるのか、ということでした。

ガードナーによれば、成長‐成熟‐衰退のプロセスは必然で、避けることはできません。どんなに立派に咲いている花でも、いずれは枯れてしまうのです。

1960年代にサンフランシスコで禅を広め、若き日のスティーブ・ジョブズの師でもあった鈴木俊隆は、弟子たちに次のように言いました。

「私のように、またみなさんのように、こうした限界のある身体を持っていることに、とても感謝しなければなりません。もし無限の人生を持っていたら、それこそ、本当に問題です」
――『禅マインドビギナーズ・マインド』
鈴木俊隆著、サンガ、p10

私たちは、ひとつの得意分野、ひとつの成功した事業、ひとつの有効な制度を守り通すことに、あまりにも縛られ過ぎているのではないでしょうか。残念ながら、それが永遠に有効でありつづけることはないのです。

しかし、花は一本でありません。ガードナーは、個人のスキルや、会社の事業や、社会の制度や価値観を、庭園にたとえています。ある時点では、満開の花がある一方で、これからつぼみを開こうとしているものあれば、散って種を落とそうとしているものもあります。

このように考えると、一本の花が枯れることを悲観する必要はありません。新しい花が芽吹くように、水をやったり、肥料をやったり、間引いたりして、環境を整えてやればよいのです。

大切なのは、うまく行っているものを維持しようとするのではなく、新しいものが生まれる環境を整えること――つまり、多様なアイデアが生まれ、試され、競争を通じて良いアイデアだけが生き残る環境を整えることなのです。



自己革新[新訳]
――成長しつづけるための考え方

Self-Renewal: The Individual and the Innovative Society

20世紀アメリカを代表する知識人として知られる
ジョン・ガードナーの代表作。

【著者】ジョン・W・ガードナー
【訳者】矢野陽一朗
【価格】1,500円+税




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