活発に批判する習慣は、社会の革新に欠かすことができない。国を愛するあまり、活力に満ちた批判を遮ってしまうような国民は、自国を救うことができない。しかし、愛のない批判、破壊力はあるが制度を育て、強化し、繁栄させることのできない批判もまた、国を救うことができない。批判のない恋人や、愛のない批判家は、社会の革新を促すことはできないのである。
―― 序文 p23

[訳者解説]

批判するのは簡単です。
誰にでも自分なりの「正義」や「正論」があるのですから、その枠にはまらない考えは、すべからく批判の対象となります。ときには、こうした批判がメディアで増幅され、恐ろしい力となって個人に襲いかかることもあります。批判から身を守る手立てはただ一つ——自分の意見を言わないことです。

これが、日本を支配している「空気を読む」という態度であり、いまでは小学生ですら身に付けている処世術のひとつです。こうした態度に疑問を持ったのが、作家の山本七平でした。1977年に刊行された『「空気」の研究』の中で、彼は次のように述べています。

もし日本が、再び破滅へと突入していくなら、それを突入させていくものは戦艦大和の場合の如く「空気」であり、破滅の後にもし名目的責任者がその理由を問われたら、同じように「あのときは、ああせざるを得なかった」と答えるであろうと思う。
――『「空気」の研究』山本七平著、文春文庫、P20

「あのときは、ああせざるを得なかった」
――どこかで聞いたセリフではありませんか?

日本には、もっと活発に自分の意見を述べ、批判しあう習慣が必要です。そして、その批判はガードナーが指摘するように、制度を育て、強化し、繁栄させることのできるような、愛のある批判でなければなりません。このような批判をするのは、とても難しいはずです。

だからこそ、批判は慎重に、熟慮を重ねた上ですべきなのです。社会全体でこのようなコンセンサスが得られれば、私たちはもっと思い切った意見を言えるようになるのではないでしょうか。

自己革新[新訳]
――成長しつづけるための考え方

Self-Renewal: The Individual and the Innovative Society

20世紀アメリカを代表する知識人として知られる
ジョン・ガードナーの代表作。

【著者】ジョン・W・ガードナー
【訳者】矢野陽一朗
【価格】1,500円+税




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