インタビュー 「MBAをとる意味」と「学びの意味」 土井英司

MBAの知識は独学で手に入る

MBAの知識は独学で手に入る

今の時代に日本人がMBAを取得する意味合いを考えると、最大の利点は「外国人と議論して渡り合った自信」ではないでしょうか。言葉の壁を超え、異なる文化の人と意見を戦わせる。その経験は何にも代えがたい貴重なものです。

ただ、それがMBAでしか得られないものかというと、そういうわけでもない。私はMBAホルダーではありませんが、かつてギリシャに留学した経験があります。そこのクラスメートはアメリカ人ばかり80人に対して日本人は私1人。仲間たちは、英語はネイティブだし議論にも慣れている。最初は授業に付いていくだけでしんどかったのですが、次第にそれに慣れてきました。こうした経験から「英語での議論」というだけでビビらなくりました。

こうした異文化に接触する体験によって、自分のなかで勝手に設けていた「ボーダー」が消えていく。留学でも海外の友人を持つのでもいいでしょうが、こうした機会を意識的につくることが大事でしょう。一方で、MBAの「知識」自体は「自分だけでも十分に習得できる」ものだと思います。社会人が退職なり休職なりしてMBAを取得するときには、金銭の負担もありますが、何よりそれまでに築いてきた人脈やキャリアが途切れてしまうデメリットが大きい。その点を勘案すると、人に聞き、本を読み、実践していく「独学MBA」のアプローチはおおいに検討に値するでしょう。

まずは「体系」を理解せよ

一人で勉強するときに、まず大切にしたいのが「体系」です。学んでいることの全体像をつかみ、「自分がどこにいて、どの欠落を埋めていくのか」、それを理解しておくことが必要です。
最初はこれを理解するのは大変かもしれません。でも大丈夫、わからなければ他人に聞けばいいんです。MBA並みのスキル身につけたいならMBAホルダーに、一流のマーケターになりたいならそういうマーケターに聞けばいい。皆、自分の学びの体系を教えてくれることでしょう。

そういう人がいないのであれば、「本」でもいいでしょう。
どんな分野であっても、体系や全体像を教えてくれる、学びの入口になる本が必ずあります。MBAであれば『MBAエッセンシャルズ』(内田学、東洋経済新報社)などがそれにあたりますし、この『Personal MBA』もそのためのよい1冊です。

そして、体系がわかったら、最初は「面白い本」を読むことをお薦めします。オペレーションなら『ザ・ゴール』(エリヤフ・ゴールドラット、ダイヤモンド社)、イノベーションなら『イノベーションのジレンマ』(クレイトン・クリステンセン、翔泳社)、マーケティングなら『ポジショニング戦略』(アル・ライズ、ジャック・トラウト、海と月社)あたりでしょう。

まずはこうした「面白い本」から読むべきと言うのは、分厚い教科書にいきなり挑むのはしんどいからです。学びを継続させるためには、その学びの「意義」を理解していなければならない。だから、ストーリーの力をもって各分野を学ぶ意義を納得させてくれる、これらの本からはじめるのがよいのです。

その次はバイブルを読む

学びの意義を十分に体感できたら、あとはそれぞれの分野のバイブルに進むとよいでしょう。オペレーションなら『トヨタ生産方式』(大野耐一、ダイヤモンド社)、マーケティングなら『コトラー&ケラーのマーケティング・マネジメント 』(フィリップ・コトラー、ケビン・レーン・ケラー)、マネジメントであれば『マネジメント【エッセンシャル版】』(ピーター・F・ドラッカー)などです。半端に簡単にした本を読んでも原理にはなかなか近づけません。分厚くても難しくても、バイブルと言われる1冊を丹念に読んだほうが、結局は効率的なのです。

学びの意義を理解する「面白い本」、その分野を網羅した「バイブル」、極論すればひとつの分野を学ぶためにはこの2冊だけ読めばいいのです。

そう言いつつも、私自身はあらゆるビジネス書を読んできました。
それは、自分のなかに「学びの体系」が出来上がっているので、その文脈に沿って深堀することができるからです。たとえば、私の専門であるマーケティング分野であれば、コトラーのバイブルを読むと、「4P」などのマーケティングのフレームワークが出てくる。それに沿って「Price=価格戦略」「Promotion=プロモーション戦略」というように落とし込んでいくわけです。
プロモーションのなかでも「コピーライティング」「アイデア発想」など、ジャンルは無限に広がっていきます。
「売れているから」「流行っているから」とやみくもに本を読むのではなく、こうした体系と文脈を理解した上で知識を深堀していくことが重要なのだと思います。


プロフィール

土井英司(どい・えいじ)

74年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業後、ゲーム会社、出版社で勤務を経て、Amazon.co.jpの立ち上げに関わり、バイヤーとして活躍。その後独立し、エリエス・ブック・コンサルティングを設立。書籍と著者のブランディング、プロデュースを行う。ビジネス書評家としても知られ、ビジネス書を紹介するメールマガジン「ビジネスブックマラソン」は5万人以上の読者を獲得、2012年7月からは「Yahoo!ビジネス」でも書評連載を開始している。主な著書に『「伝説の社員」になれ!』(草思社)、『20代で人生の年収は9割決まる』(大和書房)等がある。最新刊は『土井英司の「超」ビジネス書講義』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)。

土井英司(どい・えいじ)

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Personal MBA

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ジョシュ・カウフマン
三ツ松 新 監訳
渡部典子 訳

A5判変形 並製 本文488頁

本体価格2,600円+税

ISBN:978-4-86276-135-4 C0034

2012年8月10日発売
(地域によって多少差があります)

  • Amazon.co.jp
  • 英治出版オンラインストア
目次 THE HUMAN MIND
第7章 人の心を理解する
監訳者まえがき 「自己教育」の時代(三ツ松新) WORKING WITH YOURSELF
第8章 自分と上手につきあう
WHY READ THIS BOOK?
第1章 本書を読む理由
WORKING WITH OTHERS
第9章 他の人とうまく協業する
VALUE CREATION
第2章 価値創造
UNDERSTANDING SYSTEMS
第10章 システムを理解する
MARKETING
第3章 マーケティング
ANALYZING SYSTEMS
第11章 システムを分析する
SALES
第4章 販売
IMPROVING SYSTEMS
第12章 システムを改善する
VALUE DELIVERY
第5章 価値提供
訳者あとがき
FINANCE
第6章 ファイナンス
付録
学び続ける人の厳選ビジネス書99
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