「コーチ!リフティング10回できた!!」
僕が過去に小学生サッカーチームのコーチをやったいた時、
子ども達はよくこうやって自分の成長を目を輝かせながら報告してくれました。
報告に対して、当然僕はレスポンスをします。
レスポンスをする時に考えるのが、
「この子がさらに意欲を持てるようになる言葉ってなんだろう?」
ということです。
振り返ってみると、
相手によってレスポンスを変えていて、
その返し方には3パターンあったな、
と気づきました。
そしてそのレスポンスの3パターンというのは、
「対子ども」だけに留まらず、
誰とコミュニケーションする上でも当てはまらないことはない・・・
そう思いました。
なので今日は、
「コーチ!リフティング10回できた!!」
と報告してもらった場合を例に、
その3つのレスポンスを参考までに書いてみようと思います。
(1)「すごいじゃん!!」 =賞賛
純粋に褒めるということです。
基本的に「認められたい欲求」は誰にでもあります。
僕もとってもこの欲求が強いので、褒めて伸ばしてあげてください(笑)
褒め言葉は「すごいじゃん!」以外にもたくさんあります。
結果よりも頑張った過程を認めてもらいたい子には「よく頑張ったね~!」に変えるとか。
ただ、「褒める」という行為は、相手を「評価する」ということです。
ある本では、
子どもは「評価」すべきではなく、
ただ「認めてあげる」ことが大事
と書いてあります。
実際に、褒め言葉に対して、時々こんな子がいます。
僕がある子に対して、
「○○くんはここ最近本当に大きく成長しててすごいよね!」
と言ったときに、実際に返された言葉です。
「コーチ、本当にそう思ってる??」
僕はこの時本気で言ったのですが・・・!
学校の中で、成績というものさしで評価されている子ども達。
想像以上に「評価」に対して敏感だったりします。
自分に自信がない子、自己肯定感の低い子は、
褒めても真に受けず、疑ってしまうことがあります。
以降、この子にはレスポンスを変えました。
(2)「そっかー!10回できたんだね!!」 =復唱
簡単に言えば、「評価をしない」ということです。
「すごい」「すごくない」の評価は置いておいて、
「リフティングが10回できた」という報告をそのまま分かってあげるだけ。
大げさに言うと、
たとえすごかろうとすごくなかろうと、
コーチはお前のこと分かってあげるからな
というメッセージを込める意気込みでこの方法をとりました。
後から知ったのですが、
相手の言葉を繰り返すこの手法は「ミラーリング」と言って、
相手を尊重するコミュニケーション法として確立している一つのちゃんとした理論だったのです。
これをすると多いのは、「続きを喋ってくれる」ことです。
子ども「コーチ!リフティング10回できた!!」
俺「そっかー!10回できたんだ!!」
子ども「うん!だから次は20回を目指すんだ~!」
みたいに。
コーチ側から無闇に「すごいね!じゃあ次は20回だな!!」と目標設定してしまうと、
子どもによってはプレッシャーに感じたり、
「10回できたこと、コーチには物足りなかったのかな・・・」
と思ってしまう場合があります。
そこに対して、ミラーリングをすると、自ら次の目標を語る機会を与えることができます。
(1)で「賞賛」のことを書きましたが、
(2)ミラーリング+(1)賞賛
というような組み合わせ技も効果は高いと思っています。
いきなり賞賛されるとさっきみたいに、
「本当にそう思ってる??」ってなっちゃう子はいるけれど、
ミラーリングを嫌がる子はいません。
なので、
「10回できたんだね!(=ミラーリング)
すごいじゃ~ん!(=賞賛)」
と連携させるといいかと思います。
ちょっと(1)賞賛の話に戻ります。
「評価はよくない」という本の引用も書きましたが、
僕はやっぱり時々は思いっきり褒めてあげることは大事だと思います。
「あんま褒めると、『褒められること』が練習の目的になっちゃうんじゃないかな・・・」
とも時々思いますが、
褒められた時の相手の嬉しそうな顔見てると、
僕なんかはつい褒めてしまいます(笑)
なので、「評価よりも、認めてあげることが大事」ということも念頭に置きながら、
褒めてあげることもする、というのが僕のスタンスです。
そこはあまり神経質になり過ぎないようにしています。
(3)「え~、まだ10回しかできてないの~??(ニヤリ)」 =挑発
これはリスクありです(笑)
この言葉をかけていい相手かどうか、
その子の性格と今置かれている状況(調子がいいのか落ち込んでるのか、など)をよく見ないと使えません。
ただ、普段から生意気言ってくるようなわんぱく坊主には、
褒めるよりこっちの方がよっぽど刺さることがあります。
「だったら20回できるようになって帰ってきてやる!!」
と奮起するんです。
僕としては、普段生意気だから「褒めるのが悔しい!」と思って使い始めたのですが(笑)
意外と効果ありでした。
・・・
人の成長を促進させるに際し、
・・・いや、何に際しても、
「必ず刺さる魔法の言葉」はありません。
大事なのは、一人ひとりをよく見て、
「この人には、この状況で、どんな声かけが響くかな~」
と、その都度その都度真剣に考えることです。
上に紹介した3パターンも、
ただ当てはめるだけの無機質なものになれば、
「上辺だけの言葉」だということはすぐ相手にばれます。
特に子どもは正直だし、見抜く目を持っています。
大事なのは、本気で一人ひとりと向き合う姿勢です。
「聴く」という漢字は、
「目」と「耳」と「心」を「十」分に使う、
と書きます。
全身全霊で相手の声なき声まで聴こうとする姿勢、
それが、語るべき言葉を授けてくれます。
語る前に、よく聴く。
これは僕の中で鉄則です。
なので、
基本姿勢は相手に対する真剣な傾聴。
その上で、3つのパターンをちょっと意識してみる。
この記事を役立ててもらえるのであれば、
その点を大事にして欲しいなと思います。
最後に、
僕は経験則から正直に語ってはいますが、
専門家ではありません。
なので参考図書を↓
これは「対子ども」じゃなくても十分通用する内容でした。
100ページちょっとで、難しい言い回しも全然ないのでさらっと読めてしまいます。
15のシーンを事例としたパートと、
10の心得をまとめたパートで、
相手の可能性を伸ばすor摘み取る言葉のかけ方が解説されています。
読むと、自分が無意識のうちに抱いている「思考の枠」に気付かされたり、
ちょっとした声かけの中に意図せず含まれてしまうメッセージを知れたり、
とても勉強になりました。
関心あれば、最初の一冊にぜひ!